日本生態学会誌
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特集1 外来種の定着プロセス-森林、河川、湖沼、草原に侵入した 外来種の侵略性と多様性
  • 前迫 ゆり
    2022 年 72 巻 1 号 p. 1-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
    本特集は日本生態学会2020年大会で企画した自由集会「外来種の定着プロセス-森林、河川、湖沼、草原に侵入した外来種の侵略性と多様性」のプログラムをもとに企画したものである。さまざまな植生タイプに侵入、定着、拡散している外来種の生態的特性、拡散要因、種多様性への影響、保全・管理の課題などについて話題提供し、今後の生態系および生物多様性保全について議論することをめざした。
  • 前迫 ゆり
    2022 年 72 巻 1 号 p. 5-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,照葉樹林に侵入した外来種として、国内外来種ナギNageia nagi (Thunb.) Kuntzeと国外外来種ナンキンハゼTriadica sebifera (L.) Smallの拡散と定着について述べる。春日山原始林に隣接する御蓋山の天然記念物ナギ林から拡散したナギは照葉樹林に侵入し、シカが採食しないことから、数百年かけて拡散し、イチイガシQuercus gilva Blume林の一部はナギ林に置き換わった。ニホンジカCervus nippon subspp.の採食環境下において、耐陰性の高い常緑針葉樹ナギ林から照葉樹林に戻る可能性はきわめて低いことから、この植生変化はシカの影響による森林の不可逆的変化ともいえる。一方、1920年代に奈良公園に植栽されたナンキンハゼは奈良公園一帯および春日山原始林のギャップに広域的に拡散し、ナンキンハゼ群落を形成している。照葉樹林における空間分布の調査から、生態的特性が異なる外来木本種2種の拡散を定量的に把握した。シカの不嗜好植物でもある外来木本種の群落形成にはシカが大きく関与していると考えられた。過密度シカ個体群が生息する照葉樹林の保全・管理についても議論する。
  • 島野 光司, 後藤 智史, 小林 剛
    2022 年 72 巻 1 号 p. 13-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
    植生調査による各種の被度の情報から、河畔植生における在来種のコゴメヤナギから外来種であるニセアカシアが優占する群落への遷移過程を、TWINSPANを用いて明らかにすることを試みた。高木林を対象とした一般的な群落区分では、各種の上層(高木層、亜高木層)、低木層、草本層における被度の最も大きな値を用いて群落タイプごとの種組成を表すことが多いが、そのような方法では、高木層で優占しうる樹木種の高木層以外での分布関係が把握できない。そこで、各種の高木層、亜高木層、低木層、草本層のそれぞれの被度の値を用い、上層?下層における分布構造の情報を生かした手順で解析を行った。TWINSPANで階層ごとの被度データを活用して解析を行った結果、河畔で優占するコゴメヤナギ高木林の下層では外来種のニセアカシアが生育するが、ニセアカシア高木林の下層ではコゴメヤナギの実生や低木が生育しないことが明らかになった。この結果から、大規模な河川水による撹乱がなければ、在来種のコゴメヤナギから外来種のニセアカシアが優占する高木林に推移していくことが示唆された。本研究のような階層ごとの被度情報を活用した解析手順は、外来種が侵入した森林の更新や遷移過程を理解する上で、毎木調査による樹高や幹の直径などの情報が無いときでも有効であると考えられる。
  • 大窪 久美子
    2022 年 72 巻 1 号 p. 27-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では人為的な圧力下で成立してきた草原、特に半自然草原や畦畔草地を中心に取り上げ、主には本州中部で代表的な草原景観を有する長野県中部の霧ヶ峰での外来植物の侵入・定着の影響と植生管理の課題について述べる。霧ヶ峰では、観光道路が建設された1970年代にヘラバヒメジョオンやメマツヨイグサ等の外来植物が侵入・定着した。その後50年近く経過した現在も、これらの種の優占が継続し、群落の組成や構造を変化させ、偏向遷移が生じていることが指摘されている。このような草原を再生するためにニッコウザサの刈り取り管理が行われていたが、草原性植物の競合種であるササを減少させる効果はあるものの、一方では外来植物の侵入・定着についても対応しなければならないことがわかってきた。さらに、20年ほど前に侵入・定着したと考えられる特定外来生物のオオハンゴンソウが特に自然性の高い高層湿原近傍や特定の地域で優占している。このような地域では霧ヶ峰の草原の保全と適正な利用を目的とした県協議会等による本種の駆除事業が実施されているが、分布の拡大もみられている。また、外来植物は草原生態系における植物とチョウ類との関係性にも影響があることが上伊那地方の水田地域での研究で示されている。草原生態系への外来植物の影響は不明な点が多く、今後のさらなる研究の進展が望まれる。
  • 稗田 真也
    2022 年 72 巻 1 号 p. 35-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
    琵琶湖では、特定外来生物に指定されている侵略的外来水生植物オオバナミズキンバイの亜種ウスゲオオバナミズキンバイの繁茂が問題視され、駆除や調査活動が展開されてきた。特定外来生物に指定されていると同時に、在来近縁種などとの誤同定のリスクが伴う種であるため、誤認されたまま園芸利用・栽培される恐れがある。本種は茎や葉からの再生が可能であるため、駆除時にも植物体断片の取り残しや拡散に注意が必要である。さらに結実も見られるため、侵入地での埋土種子集団の形成や種子散布による拡散に注意が必要である。琵琶湖では、人力駆除、建設機械などを用いた機械駆除のほか、駆除後の再生と群落回復を防止するための巡回・監視、ジェット水流を用いた駆除そして隣接して生育する侵略的外来水生植物チクゴスズメノヒエを併せた駆除など、用途に応じ種の特性を考慮した対策が見られる。本亜種のように拡散力の高い侵略的外来種に対しては、侵入した各地で早期防除される体制の構築が求められる。2019年1月までに14か所で根絶しているイングランドのように、資金の支援や技術的助言そして職員による駆除実施など柔軟な対応を伴いながら、土地所有者に管理責任を求める制度が有効であると考えられる。
  • 坂田 ゆず
    2022 年 72 巻 1 号 p. 41-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
    外来植物は、瞬く間に分布域を広げ在来植物を駆逐する場合がある一方で、定着してから気づいたら姿を消していたという場合もある。こうした外来植物の在来生態系でのふるまいの違いを理解・予測する上で、外来植物の自身の形質に加えて、外来植物と在来植物の間の相互作用のメカニズムの理解が欠かせない。本稿では、外来植物が植食者を介して在来植物に与える負の影響(見かけの競争)に注目し、これまで研究されてきた事例を幅広く紹介し、後半ではこの3者間の相互作用が環境要因によってどのように変化しうるかについて議論する。さらに見かけの競争によって、意図的・非意図的な外来植食者の侵入が逆に在来植物の食害を増加させる事例についてまとめた。また、筆者が外来植物のセイタカアワダチソウを材料に、原産地と侵入地で見かけの競争の地理的な変異に注目して行っている事例研究を少し紹介する。最後に、外来植物を取り巻く環境の変化を取り上げて、変動する環境下において、変化していく外来植物のふるまいへの理解を深める今後の研究の展望を探りたい。
  • 鷲谷 いづみ
    2022 年 72 巻 1 号 p. 49-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
特集2 動物行動学を物理の目で捉え直す:力と熱が形づくる動物の行動様式
  • 吉田 誠
    2022 年 72 巻 1 号 p. 53-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
  • 菊地 デイル万次郎
    2022 年 72 巻 1 号 p. 55-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
    バイオメカニクスは生物の形態や運動を力学的に分析する学問である。生物の行動は小さな動きの積み重ねであり、力学的な制約のもとで形成される生物の形態と運動はエネルギー収支を介して適応度にまで影響する。これまでバイオメカニクスは生物の機構を力学的に探求することで、生物の運動における普遍的な原理や機能の発見を遂げてきた。一方で、バイオメカニクスは境界領域であるためか、“孤立した学問”になりやすいことが指摘されている。このような状況を打破するには、生態学の研究テーマにも取り組むことで、より広範な問いに答えていくことが必要であろう。近年は、形態や運動の機能と制約のトレードオフ関係を分析することで、進化についても理解を深めようとするアプローチが提唱されている。こうした新しいアプローチに加え、隣接した分野の研究者とも連携していくことでバイオメカニクスは生態学の一分野として発展していくだろう。本論では代表的な研究を紹介しながら、バイオメカニクスが生態学分野にどのように貢献してきたのかを考察する。
  • 木下 千尋
    2022 年 72 巻 1 号 p. 63-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
    体内で産生される代謝熱を熱源として体温を環境温度より高く保つ性質を内温性、外部の熱源によって体温が左右される性質を外温性という。爬虫類は一般的に外部の熱源に依存して体温を調節する外温動物だが、一部の海棲爬虫類は高い内温性を持ち、環境温度よりもある程度高い体温を保っている。動物の体温は体に出入りする熱エネルギーの収支によって決まり、体サイズや代謝速度と密接に関わっている。本論では、内温性を持つ海棲爬虫類として、特にウミガメ類に焦点を当て、体サイズと代謝速度に着目しながら体温を水温よりも高く保つメカニズムを解説する。さらに、遺伝的隔離のあるアカウミガメの個体群間で見られた休止代謝速度と体温の違いに注目し、エネルギー面での生態学的意義を議論する。
  • 阿部 貴晃
    2022 年 72 巻 1 号 p. 73-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
    温度は代謝速度に大きな影響を与え、代謝速度は動物の活動性と密接に関係する。哺乳類や鳥類のような内温動物は熱産生による体温保持機構によって、高い代謝速度と活動性を維持する戦略をとる。一方で、体温が外部の熱源に依存する外温動物では、活動性を上げるために、爬虫類の日光浴にみられるような体温調節をおこなう。つまり、外温動物は、適切な体温、適切な代謝速度を行動によって調節するという戦略をとる。ただ、そのような行動的な代謝調節は、1日規模の時空間スケールでの温度環境の変化に対しては有用であるが、季節変動のように大きな時空間スケールでの変化に対しては意味をなさない。外温動物は季節変動によって1日の平均的な体温が変わっても、代謝速度を変えることで自身の好適な温度を調節する機構を備えている。本論文では魚類にみられる行動的、生理的な応答の例としてサケ科魚類に焦点を当てる。サケ科魚類の多くが母川回帰性を有し、河川や支流単位で集団が分かれる。サケ科魚類は冷水性かつ狭温性であるとされるが、経験する水温環境は集団の違いに応じて多様であり、自然環境下における魚類の温度適応の題材として用いられてきた。本論文では、代謝速度計測によってみえてきた魚類の温度適応の実態を概説し、その生態的意義を議論する。
  • 中村 乙水
    2022 年 72 巻 1 号 p. 85-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
    海洋環境は深度によって温度が大きく異なり、水柱内を自由に移動する能力のある魚類は深度を変えることで能動的に体温を調節することができる。また、身体が大きい魚ほど熱慣性が大きくなり、好適温度外の環境中に滞在できる時間が長くなる。本研究では、魚類が好適温度外の環境にいる餌を利用する際の効率的な採餌様式について、深い潜水を行って深海性のクラゲ類を食べるマンボウMola molaを例として、体温調節の観点から考察した。マンボウが潜水を行って餌のいる低水温の深場で採餌した後に高水温の海面付近で体温を回復することを1回の潜水サイクルと定義し、潜水時間を変化させた時に餌場滞在時間、移動時間、海面滞在時間の時間割合がどのように変化するかのシミュレーションを行った。潜水時間が短いと移動時間の割合が増え、潜水時間が長いと体温回復に要する時間の割合が増加し、餌場滞在時間を最大にするような潜水時間が得られた。この潜水時間は、餌場が深くなるほど長くなり、また体サイズが大きくなるほど長くなると推定された。これは餌資源ではなく熱資源を効率的に利用することで採餌に充てられる時間を最大化するという最適採餌理論の一例になると考えられる。
  • 吉田 誠, 阿部 貴晃, 菊地 デイル万次郎, 木下 千尋, 中村 乙水
    2022 年 72 巻 1 号 p. 95-
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/11
    ジャーナル オープンアクセス
    飛翔および遊泳する動物にとって、移動時のエネルギーコストを低く抑えることは重要である。移動コストは、ある地点から別地点に到達するまでに必要な運動コストと、移動中に体内の恒常性維持のため消費される代謝コストからなる。代謝コストは移動時間に比例して増加するため、運動コストと代謝コストの間には移動時間を介したトレードオフが生じる。温度環境に応じて代謝コストが変動する外温動物の場合、自身の適温範囲外に滞在できる時間は限られ、こうした制約(体内と体外における環境差)も動物の移動範囲を規定する要因となる。近年、バイオロギングやバイオメカニクス分野の発展により、野外で暮らす動物の移動コストが、動物自身の形態や移動様式により巧妙に低減されている様子がわかってきた。多くの水生動物に見られる抵抗の少ない形状や、流体中における特徴的な移動方法は、個体が移動する際に生じる抵抗を抑え、運動コストを低減する。野外で観察される様々な動物の移動パターンは、運動コストと代謝コストの和(cost of transport)を最少化するような理論的予測とよく一致する。本稿ならびに本特集で紹介してきた、エネルギーコストを指標として、動物の行動を捉え直す試みは、動物の形態や、様々な時空間スケールで繰り広げられる個体の移動様式を統一的に理解し、変わりゆく環境下に置かれる動物個体群の将来を予測する有用なアプローチとなるだろう。
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