日本生態学会誌
Online ISSN : 2424-127X
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総説
  • 綿貫 豊, 山本 裕, 佐藤 真弓, 山本 誉士, 依田 憲, 高橋 晃周
    2018 年 68 巻 2 号 p. 81-99
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/02
    ジャーナル フリー
    人間活動のインパクトに対して海洋生態系や生物多様性を保全するため、海洋保護区の候補として生態学的・生物学的重要海域(Ecologically or Biologically Significant Areas, EBSAs)を特定することが求められている。しかし、外洋域においては、一般に生物情報の収集に大きなコストがかかるため、EBSAの特定は容易ではない。そこで、海棲哺乳類、海鳥類、魚類などの外洋性大型高次捕食者の分布や移動データを使うアイデアが注目されている。本論文では海鳥類のデータを利用して、EBSA基準の一つである、生物学的生産性の高い(一次生産性が高く複数の栄養段階を通してエネルギー流の大きい)海域を特定することの利点について議論する。海鳥は海上で容易に観察できるため、船からの目視観測による分布調査が数多く行われてきた。その結果、海鳥の分布は10 kmスケールで動物プランクトンやイワシ類などの餌生物密度と相関することがわかった。したがって、生物学的生産性の高い海域を海鳥の分布によって知ることができるだろう。加えて、海鳥のコロニーの分布と繁殖数や移動軌跡のデータが世界的に蓄積されてきており、これらのデータセットを使って、実際に管理しうる空間スケールでEBSAを特定できるかもしれない。さらに、衛星リモートセンシングで得た水温や一次生産などの環境データと統合することで、こうした生物学的生産性の高い海域が成立するプロセスを理解し、これらの変動を予測することが可能である。また、海鳥の餌や繁殖成績および体組織中の化学マーカーなどの情報から海域内の漁業や汚染など人間活動に起因するストレスをモニタリング・評価することができるだろう。海鳥から得られるデータ特有のバイアスやデータ収集方法の特性から生じる限界について理解した上で、海鳥の分布を生態学的・生物学的重要海域特定に利用することにより、生物多様性保全に向けた具体的な海域管理に貢献できるだろう。
  • 尾崎 研一, 明石 信廣, 雲野 明, 佐藤 重穂, 佐山 勝彦, 長坂 晶子, 長坂 有, 山田 健四, 山浦 悠一
    2018 年 68 巻 2 号 p. 101-123
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/02
    ジャーナル フリー
    森林は人間活動に欠かすことのできない様々な生態系サービスを供給しているため、その環境的、経済的、文化的価値を存続させる森林管理アプローチが必要である。保残伐施業(retention forestry)は、主伐時に生立木や枯死木、森林パッチ等を維持することで伐採の影響を緩和し、木材生産と生物多様性保全の両立をめざす森林管理法である。従来の伐採が収穫するものに重点を置いていたのに対して、保残伐は伐採後に残すものを第一に考える点と、それらを長期間、少なくとも次の主伐まで維持する点に違いがある。保残伐は、皆伐に代わる伐採方法として主に北アメリカやヨーロッパの温帯林、北方林で広く実施されているが、日本を始めとしたアジア諸国では普及しておらず、人工林への適用例もほとんどない。そこで、日本で保残伐施業を普及させることを目的として、保残伐施業の目的、方法、歴史と世界的な実施状況を要約した。次に、保残伐の効果を検証するために行われている野外実験をレビューし、保残伐に関する研究動向を生物多様性、木材生産性、水土保全分野についてとりまとめた。そして、2013年から北海道で行っている「トドマツ人工林における保残伐施業の実証実験(REFRESH)」について紹介した。
  • 中西 晃, 東 若菜, 田中 美澄枝, 宮崎 祐子, 乾 陽子
    2018 年 68 巻 2 号 p. 125-139
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/08/02
    ジャーナル フリー
    林冠生物学は、生物多様性や生態系機能が局在する森林の林冠において、多様な生物の生態や相互作用、生態学的な機能やプロセスの理解を目指す学問である。林冠は高所に存在し複雑な構造を有するため、林冠生物学研究の飛躍的な進展は1980年代以降の林冠アクセス手段の発達に拠るところが大きい。様々な林冠アクセス手段の中でも、ロープテクニックを駆使して樹上にアクセスするツリークライミングは道具を手軽に持ち運べることから移動性に優れ、対象木に反復してアクセスすることが可能である。また、林冠クレーンや林冠ウォークウェイなどの大型アクセス設備に比べて経済的であるという利点が活かされ、林冠生物学研究に幅広く適用されてきた。近年では、ツリークライミングの技術や道具の発展によって安全性や作業効率の向上が図られており、今後ますます活用されることが期待されている。本稿では、ツリークライミングを用いた林冠生物学の研究例を紹介しつつ、樹上調査における林冠アクセス手段としてのツリークライミングの有用性を示す。さらに、ツリークライミングを用いた林冠生物学研究の今後の展望および課題について議論する。移動性、経済性、撹乱性に優れたツリークライミングは、場所の制限を受けないため、あらゆる森林での林冠生物学研究において今後も重要な役割を担うと考えられる。また、他の林冠アクセス手段や測定機器と併用することでさらなる進展が期待される。一方、安全かつ有効なツリークライミングが普及するためには、研究調査以外の領域も含めたツリークライミング・ネットワークの形成と情報共有のためのプラットフォームづくりが急務である。
生態教育の今と未来(2)
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