オジギソウ
Mimosa pudica L. は、接触や傷害といった刺激を感じ、刺激の情報を運動器官である葉枕まで伝播させ、素早く葉を動かすことができる。しかし、刺激情報を伝える長距離シグナル分子や、高速運動の仕組みや適応的意義に関しては、あまり理解が進んでいない。筆者らは、広視野かつ高感度の蛍光顕微鏡システムに電気生理学的測定法を組み合わせることで、Ca
2+バイオセンサーを発現させた遺伝子組換えオジギソウの葉の、細胞質のCa
2+レベルと表面電位の変化を同時に測定した。これらの解析によって、電気シグナルと共役したCa
2+シグナルがオジギソウの高速運動を介在する長距離シグナルであることを明らかにした。さらに、薬理学的および遺伝学的手法を用いて高速運動できないオジギソウを作出し、運動の適応的意義について解析した。高速運動できない葉は、高速運動する葉と比較して、約2倍昆虫による食害を受けやすいことがわかった。これらの結果に基づき、筆者らはオジギソウの防御応答の一連の流れを説明する次のようなモデルを提案した。昆虫による食害はCa
2+・電気シグナルを発生させ、これらのシグナルが葉枕に向かって伝播し、その後Ca
2+によって介在される葉の高速運動が起こる。この高速運動によって、昆虫に対する足場が不安定になり、オジギソウの葉は外敵の攻撃から身を守っていると考えられる。
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