本特集をまとめるにあたり、軍拡競走の理論と検証の統合を目指す研究のモデルケースになると考えられる3つの例を論じることにする。第一の例は、本特集でとりあげたSasaki-Godfrayモデルのきっかけになったショウジョウバエ抵抗性と寄生蜂ビルレンスの軍拡競走に関する飼育実験、第二は本特集および第52回生態学会のシンポジウムを組織する理由となった東樹と曽田によるヤブツバキとツバキシギゾウムシの防御・攻撃形質の軍拡競走の野外研究と津田によるマメゾウムシの穿孔深度と寄生蜂の産卵管長の共進化に関する理論的研究、そして最後にバクテリアの抵抗性とその溶菌性フアージ病原性軍拡競走に関するBucklingの共培養進化実験についてである。