2007 年 57 巻 1 号 p. 48-54
近年、モデル生物の研究において表現型可塑性に関わる遺伝子群が明らかにされつつある。本稿では、まずシロイヌナズナの開花を担う遺伝子群について、長期の低温に対する可塑的応答を中心に解説する。特にFLC・FRI遺伝子が開花の早さの自然変異や地理的クラインの形成に果たしている役割についての研究を紹介する。また、エピスタシス、多面発現、倍数化といった開花調節の適応進化の研究では取り扱われてこなかった重要な現象についての研究も取り上げる。最後に、表現型可塑性の分子遺伝学的基盤が明らかになることで可能となった適応的な表現型可塑性に関する研究の方向性について議論する。