河川上流部では落葉枝リターが系の有機物流入の大部分を占め、リターを食物資源とする破砕食者が多く生息する。リターに依存した食物網の理解においてはリターの量や質が絶えず意識され、河川区間内のリター滞留量を規定する要因、リター量と底生動物量の関係、また落葉の質と底生動物の関係についてこれまで多くの研究がなされてきた。しかしながら、河川区間内でリターの滞留には時空間的変異があり、破砕食者の分布も時空間的に偏りがあるため、実河川における破砕食者のリターの破砕や消費を理解する上で、リターと破砕食者の時空間的な重なりを考慮すべき状況がある。本稿では、河川におけるリター滞留の時空間分布を、破砕食者の出現時期や侵入定着のしやすさの観点から捉えなおした。破砕食者は一般に秋や冬に多いが、河川内のリター量が減少する春や夏に出現する種類も少なくない。破砕食者の侵入定着しやすさの観点から、流れの速い場(瀬)のリターはカワゲラなど小型の破砕食者、また流れの遅い場(淵)のリターはトビケラなど大型の破砕食者にとって利用しやすい資源となっている。ある河川区間におけるリターの時空間分布は、河畔からのリター供給や河床地形構造とともに、落葉種やその分解過程によって変わるリター自体の特性(大きさ、堅さなど)に左右される。河川区間におけるリターと破砕食者の時空間的な重なりによって、リターと破砕食者の量的な関係や区間全体におけるリター破砕速度は異なりうる。リターと破砕食者の時空間的な重なりを捉えるには、リターの分布を規定している河畔植生や河床地形構造とともに、出現する破砕食者の種や時期、破砕食者が侵入定着しやすいリター滞留場を知ることが重要である。