日本生態学会誌
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特集 「アウェイ」の生態学
私立文系大学生を対象とした生態学教育 : 生態学を暮らしにつなげる試み(<特集>「アウェイ」の生態学)
谷垣 岳人
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2012 年 62 巻 1 号 p. 59-66

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抄録

戦後の日本では、産業構造の変化や都市化により、身近な生態系が急速に失われていった。このため、現在では生態系の働きから生み出される様々な便益である生態系サービスが損なわれている。人と自然との持続的な関係を構築するには、生態系の働きを知り、持続的に利用する知恵を学ぶ必要がある。大学への進学率は5割を超え、このうち私立大学は約8割を占める。このため私立大学の学生は、生態学の知識を普及させるため重要な教育対象となってきた。しかし、私立文系の大学生に生態学を教えるうえで、いくつかの問題がある。それは、①高校で生態学を学んだ学生が少ないこと、②生態学を学ぶ意欲に個人差が大きいこと、③一般教養科目は、大人数講義のため座学が中心であること、の3つである。これらの問題を解決するため、龍谷大学の文系学生を対象とした一般教養科目「環境論」では、まず大人数による野外実習をおこない、内発的な意欲を高めたのち講義を行っている。また、2年の後期から学部を超えて所属できる環境サイエンスコースでは、大学が所有する里山林において、人が自然を持続的に利用する知恵と生態学的発想を学ぶ実習を、地域住民とも連携しながら実施している。また、講義と実習を相互に連関させながら、生き物に馴染みのない文系学生でも、具体的なイメージを持って学べる工夫を行っている。

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© 2012 一般社団法人 日本生態学会
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