日本生態学会誌
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特集2 いま種間競争を問いなおす:繁殖干渉による挑戦
繁殖干渉の頻度依存性に関する現在までの知見と今後の研究の方向性(<特集2>いま種間競争を問いなおす : 繁殖干渉による挑戦)
京極 大助西田 隆義
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2012 年 62 巻 2 号 p. 239-245

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抄録

近縁種間にしばしば認められる排他的な関係は長らく資源競争によってもたらされると考えられてきたが、多くの実証研究が行われたにもかかわらず、資源競争の重要性が示されたとは言いがたい。これに対し、繁殖干渉と呼ばれる配偶過程において生じる誤った種間での求愛行動などが、近縁種の関係を決定する上で重要であると考えられるようになってきた。繁殖干渉は相対的に個体数の多い種のほうが相手種に対してより強い悪影響を与える、すなわち頻度依存的にはたらくと考えられてきた。ここで本稿では繁殖干渉の強さを、繁殖干渉による個体の適応度の低下量と定義する。繁殖干渉はその頻度依存性によって正のフィードバックを生じやすく、そのため近縁種間の排他的な関係を説明する論理として資源競争よりも一般性が高いと考えられてきた。しかし相互作用する2種の総密度が大きく変化しても2種の頻度だけで繁殖干渉の強さを十分説明できるのかはこれまでほとんど問題にされてこなかった。実際には、総密度の変化が2種の頻度と繁殖干渉の強さの関係を変化させる可能性がある。また、配偶者選択のような行動が2種の頻度に応じて変化する場合には、繁殖干渉のはたらき方がこれまで考えられてきたよりも複雑になる可能性がある。個体が経験する繁殖干渉の強さは同所的に存在する同種個体・他種個体双方の個体数によって決まるため、繁殖干渉を考える上で個体群生態学的な視点は欠かせないが、我々の繁殖干渉に対する個体群生態学的な理解はあまり進んではいない。繁殖干渉がもたらす種々の生態学的・進化的な帰結を統一的に理解するためにも、繁殖干渉の個体群生態学的な研究が必要である。

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© 2012 一般社団法人 日本生態学会
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