日本生態学会誌
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特集1 ハナバチと訪花性双翅目の多様性研究の現状と課題
ハナバチと訪花性双翅目の多様性研究の必要性(<特集1>ハナバチと訪花性双翅目の多様性研究の現状と課題)
鈴木 まほろ石井 博安部 哲人
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2014 年 64 巻 1 号 p. 3-6

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抄録

ミツバチ属・マルハナバチ属などの真社会性ハナバチには、これまで多くの研究者の関心が注がれてきたが、これらは多様な訪花昆虫のうちのごく一部分に過ぎない。本特集における新庄らの論文では、地球上の様々な地域で行われた28の訪花昆虫群集研究のデータをレビューし、気候帯および植生タイプと訪花昆虫群集との対応を調べた。その結果、群集の組成は気候帯や植生タイプと一定の対応を示し、特に北極ツンドラや高山帯における双翅目の優占が顕著であった。また温帯では単独性ハナバチの割合が高かった。送粉者の衰退が大きな社会問題として国際的に議論されている現在、特に送粉という生態系機能の点で重要と考えられる単独性ハナバチと双翅目昆虫について、その多様性と機能に関する基礎研究の必要性が高まっている。安部の論文では、特にハナバチについて、送粉者の多様性と送粉機能、さらに人為的撹乱による送粉者衰退の問題をレビューし、外来種の影響を中心に議論した。今後、多様な訪花昆虫の生態系機能について研究する上で、インベントリーをはじめとする基礎的な分類学・生態学的情報は必要不可欠である。多田内らの論文では、日本のハナバチと双翅目昆虫のインベントリーの現状を振り返り、今後の課題を整理した。我が国においては、送粉者衰退問題について議論するにも、基礎データとなる過去の標本や観察情報の蓄積が少なく、それらを共有するためのプラットフォームもほとんど存在しない。今後はそれぞれの分類群について、基礎研究の蓄積量に応じた、積極的かつ組織的な情報の集積と共有が図られることを期待したい。

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© 2014 一般社団法人 日本生態学会
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