抄録
体内で産生される代謝熱を熱源として体温を環境温度より高く保つ性質を内温性、外部の熱源によって体温が左右される性質を外温性という。爬虫類は一般的に外部の熱源に依存して体温を調節する外温動物だが、一部の海棲爬虫類は高い内温性を持ち、環境温度よりもある程度高い体温を保っている。動物の体温は体に出入りする熱エネルギーの収支によって決まり、体サイズや代謝速度と密接に関わっている。本論では、内温性を持つ海棲爬虫類として、特にウミガメ類に焦点を当て、体サイズと代謝速度に着目しながら体温を水温よりも高く保つメカニズムを解説する。さらに、遺伝的隔離のあるアカウミガメの個体群間で見られた休止代謝速度と体温の違いに注目し、エネルギー面での生態学的意義を議論する。