2022 年 63 巻 1 号 p. 35-49
X ジェンダー(男女どちらでもない,あるいは男女どちらでもある,あるいは性という概念すらもたない性自認をもっており,その性自認が流動することもある人)の被服体験を調べるために,X ジェンダー20 名にインタビューして質的分析した.その結果,X ジェンダーの多様な性自認が起因となる性別違和が「被服によって提示したい自己」を生じていることと,ここから始まる被服体験の構造が明らかになった.そこでは,自分の周りの受容によって被服体験が異なり,男女二分化した社会の影響を受けている.X ジェンダーは生まれながらの身体的特徴を隠す工夫をしているが,MtX(Male to X)とFtX(Female to X)には,この身体的特徴を隠す行動にも違いがあり,性自認と性役割にも違いがあること,MtX は女性に憧れる被服行動をするがFtX は女性から逃げていることが被服行動にも現れていることがわかった.また,X ジェンダーに近い特性を持つ女子大学生10 名にもインタビューを行って,X ジェンダーの概念と比較した.