繊維製品消費科学
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ガラス転移温度の異なるポリウレタン樹脂の染色挙動と染色堅ろう性
芳倉 虹子望月 優菜榎本 雅穗白井 一彰解野 誠司
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2023 年 64 巻 12 号 p. 750-757

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抄録

本研究では,分散染料で染色可能な合成皮革の開発を目的に,ガラス転移温度(Tg)の異なるポリウレタン(PU)樹脂を用いたフィルムを作製し,フィルムの染色挙動と染色堅ろう性について検討を行った.また,あらかじめ分散染料で染色した銀面付き可染人工皮革にこれらのPU 樹脂をオーバーコートした際の染料移行防止性能とTg の関係を考察した.さらに,これらのPU 樹脂を銀面層樹脂として用いた合成皮革を作製し,その実用性評価として分散染料染色後に還元洗浄を行い,染色性と染色堅ろう性を評価した.その結果,染色温度別のPU 樹脂フィルムへの染着速度はTg に応じて変化し,低温染色においては低いTg を有するPU 樹脂の方が染着速度は速く,染着量も多かったが,染色温度100℃では,いずれも迅速に染着が進み,平衡染着量はTg の上昇に応じて高くなることが確認できた.また,PU 樹脂による染料移行防止性能の検討では,Tg の上昇に応じた染料分子の移行抑制が確認でき,合成皮革の銀面層として用いた検討においては,還元洗浄が可能であったTg の高いPU 樹脂について,染色性,染色堅ろう性ともに良好な結果が得られた.

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© 2023 一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
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