1993 年 34 巻 12 号 p. 627-632
ハイヒール高さの差異が皮膚温と衣服内気候に与える影響を観察するために実験が, 1990年5月から6月にかけて大学の建物の屋上で6人の青年女子を被験者にして行われた.二種類のタイプの靴, すなわちハイヒール靴 (ヒール高: 6.0cm, 重量330g) とロウヒール靴 (ヒール高: 2.5cm, 重量320g) が用意された.靴材料は, 天然皮革で, 色は白であった.実験フィールドにおける気温は, 23~28℃, 相対湿度は, 55~65%, 黒球温度は, 28~36℃, 風速は, 0.6~1.7m/secであった.90分間の実験期間中温熱生理パラメーターと衣服内気候が連続的に測定された.被験者は, 20分間メトロノームのアンダンティーノにあわせて日向を歩行し, その後10分間日陰で休息した.これらのスケジュールを3回繰り返した.主要な結果は, 1) 下腿と足背の皮膚温は, ロウヒール靴着用時よりもハイヒール靴着用時において, 90分間の実験期間中, 大部分の間有意に低く保たれた.2) 下腿前方の衣服内温度と衣服内湿度は, 90分間の実験期間中ロウヒール靴着用時よりもハイヒール靴着用時において, それぞれ約半分および大部分において有意に低く保たれた.
両靴間における大腿と足背の皮膚温が異なっていたという本実験の主要な結果がハイヒール靴着用とロウヒール靴着用によって生じる皮膚の血管運動をコントロールする交換神経系の興奮レベルが異なるという視点から論じられた.