繊維製品消費科学
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ブムロとリン化合物による防炎加工ポリエステルの消費科学的性質
中西 茂子加藤 祐香金 守昌
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1994 年 35 巻 3 号 p. 140-148

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抄録

前2報に引続き, 本報は消費者にとって実際的見地から著しく重要である防炎加工ポリエステルの消費科学的性質を取扱うものである.
さらに本研究においてはリン源として3種のフエニルリン酸塩を比較のために用いた.結果を要約すると次のようになる.
1) いずれの試料も防炎加工により引張り強度が向上したが, これは防炎加工がポリエステル繊維へ与える今一つの性質向上への寄与である.
2) いずれの試料のLOI値も25回のランドリー後増加を示した.この原因として水分率の増加が考えられたため水分率の測定を行った結果洗濯回数の増加に伴って水分率が増加するのがみられた.そのため, 疎水性の繊維では含水量の増加がLOI値の上昇に寄与することが立証された.
3) ドライクリーニングの場合はいずれも若干のLOI値の低下がみられたが, これは加工剤が有機溶剤溶解性であることによると考えられる.しかしいずれも27%の限界値以上のレベルは維持した.
4) 引張り強度に関しては, いずれの場合もランドリー, ドライクリーニング後には若干の低下を示したが, 未加工試料又はそれ以上のレベルは保っていた.
5) 耐光性については, Br源であるHBCDで処理した試料は48時間紫外線照射後も何らLOI値の低下を示さなかったが, リン化合物は照射時間に伴って徐々に低下した.これらのリン化合物にHBCDを添加するとLOI値は上昇し耐光性も向上した.しかしHBCD処理試料は引張り強度の低下が大きかった.
6) 3種のフェニルリン酸塩の影響を比較すると, triphenyl phosphateがdipheny methyl phosphate, diphenyl ethyl phosphateに比べて最もすぐれた結果を示し, methyl, ethyl基よりphenyl基の方が防炎加工には最も適切であることがみとめられた.

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© 社団法人 日本繊維製品消費科学会
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