繊維製品消費科学
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アニオン性ポリビニルアルコールの汚染防止作用におよぼす温度の影響
尾畑 納子桑原 宣彰松平 光男
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1995 年 36 巻 11 号 p. 693-699

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抄録

酸化鉄粒子汚れに対するアニオン性ポリビニルアルコールの汚染防止作用について, アルカリ処理ポリエステル布と通常のポリエステル布とを用いて, 汚染温度を変化させてそれらの影響を調べた.これらの結果は以下のとおりである.
1) 酸化鉄粒子が繊維を汚染する際, 平衡に達するのは, 処理ポリエステル布では, 2分程度であり, 未処理布では, 15分程度であった.また, それらの汚染の程度は, 処理ポリエステル布が汚染し易かった.2) 処理ポリエステル布への酸化鉄粒子の吸着機構は, ラングミュア型の機構であった.
3) いずれの基質に対しても, 温度が高いほど汚れ易く, 特に, 通常のポリエステル布の方が, 温度依存性が高いことがわかった.また, 処理ポリエステル布の温度依存性が小さかったのは, アルカリによって表面に生成したイオン性の官能基と, 極性の強い酸化鉄粒子とが吸着に関与しているためと考えられる.
4) 高分子を添加した場合においても処理ポリエステル布の方が汚染し易かった.また, S-PVA溶液を添加した系では温度が低いほど汚染防止効果が高かった.
5) S-PVA添加系での汚染防止作用におよぼす温度の影響は低濃度域よりも, 高濃度域で顕著となり, また, S-PVAIよりもS-PVA IIの方が温度の影響が大きかった.これらから, 酸化鉄粒子と基質の相互作用のほかに, 温度変化に伴って起きる高分子自身の形状の変化が, 汚染防止効果に影響をおよぼしていることが考えられる.

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© 社団法人 日本繊維製品消費科学会
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