繊維製品消費科学
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市販はっ水加工織物の洗濯, アイロンがけによる表面特性の変化
脇田 登美司森 俊夫齋藤 益美土井 千鶴子
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2001 年 42 巻 2 号 p. 113-119

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抄録
4種類の市販はっ水加工織物を購入し, 5回および10回洗濯を行い, 160℃で3分間アイロンがけを行ったあと, はっ水性, はっ油性を測定した.その結果, 洗濯によってはっ水性はいったん低下するが, その後のアイロンがけによってほぼ原布のはっ水性まで回復した.一方, 洗濯によっていったんなくなったはつ油性についても, アイロンがけによってある程度まで回復する場合が認められた.なお, 洗濯前後とアイロンがけによるはっ水性の変化はESCA分析によっても確認され, F1S強度は洗濯によって減少し, アイロンがけによって増加した.一方, O1S強度は洗濯によって増大し, アイロンがけによって減少した.これらの結果からはっ水加工織物の洗濯, アイロンがけによるはっ水性の変化は繊維表面の化学組成の変化が大きく関与しているものと考えられる.洗濯によるこのようなはっ水性の変化については, フルオロアルキル基のもぐり込み, アイロンがけによる表面への移動などによって説明されているが, 繊維表面に付着した剛直なフッ素樹脂が洗濯によって繊維のはるか内部にもぐり込み, アイロンがけによって再びごく表面まで移動するようなことは起り難いと考えられる.われわれは洗濯で表面に残留したごく微量の水分がアイロンがけで除去されるためと考えている.
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© 社団法人 日本繊維製品消費科学会
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