雪氷
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論文
菅平高原における積雪層構造の年々変動と冬季天候パターンとの関係
浪間 洋介上野 健一
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2024 年 86 巻 2 号 p. 97-114

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抄録

長野県菅平高原での15冬季分の積雪断面観測結果に基づき,天候パターンの年々変動が積雪構造に与える影響を明らかにした.2月中旬の積雪深は根雪開始以降の積算降水量と有意な相関を示した.積雪深に占めるざらめ雪層の割合や氷板形成には年々変動が大きく,根雪開始以降の平均気温や積雪上の降雨(ROS)の発生頻度と有意な相関が見られた.アメダスデータから主要な雪層の形成期日を推定すると,氷板やざらめ雪層の発生の多くがROSを伴う低気圧性の降水イベントであった.1991/92年以降の31冬季をサンプルに,12~3月の月単位の気温・降水量・最大積雪深と根雪開始・終了日を変数とし,天候・積雪季節内変化パターンを因子分析により5つ抽出した.3月の気温と根雪終了日の変動傾向を示すパターンは温暖・早期化する変化傾向を示し,1月が高温でROSが多発するパターンは10年程度の周期性を示した.さらに,SNOWPACK積雪モデルを利用して,15冬季の積雪プロファイルをシミュレーションしたうえで観測値と比較した.その結果,モデルはROSの発生日にざらめ雪層を形成し,断面観測によるざらめ率の年々変動も概ね再現する事を示した.

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