雪氷
Online ISSN : 1883-6267
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論文
  • 竹花 佑香子, 奈良間 千之, 有江 賢志朗, 杉山 博崇
    2026 年88 巻5 号 p. 365-379
    発行日: 2026/09/15
    公開日: 2026/09/10
    ジャーナル フリー

    本研究では,飛驒山脈北部,後立山連峰東面に位置する白馬沢雪渓において,地中レーダ探査による氷厚測定,GNSS測量およびUAV空撮による流動観測を実施し,白馬沢雪渓が氷河である可能性を検討した.測定の結果,2025年9月末時点で最大氷厚約32 m,長さ約360 mの氷体と,2022年9月26日~2024年9月10日・10月22日の約2年間で最大傾斜方向へ約2 mの氷体の流動が確認された.これらの値は立山連峰に位置する御前沢氷河と内蔵助氷河を上回る値であり,白馬沢雪渓は氷河であると考えられる.一方,2024年に氷体末端の崩落,2025年には大規模な氷体の破断が生じており,近年の質量減少にともなう構造不安定化が進行していると考えられる.また,グレンの流動則に基づいて積雪荷重を考慮した年間の塑性変形による表面流動速度を推定した結果から,白馬沢雪渓において冬期には積雪荷重により流動が促進される可能性が示唆された.

  • 井手 玲子, 神田 健三, 岡本 遼太郎, 鈴木 啓助, 小熊 宏之
    2026 年88 巻5 号 p. 381-404
    発行日: 2026/09/15
    公開日: 2026/09/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,穂高岳涸沢における多年性雪渓の長期の変動を明らかにするとともに,その長期変化傾向(トレンド)および年々変動に及ぼす気象要因の影響を解明することを目的とした.そのため,測量図,空中写真や定点カメラ写真,人工衛星データなど,1967~2025年の多種多様な画像を網羅的に収集した.これらをGISと最新の画像投影手法を用いて時空間的に統合することで,多年性雪渓面積の59年間に及ぶ長期連続データセットを構築した.解析の結果,雪渓面積は大きな年々変動を伴いつつも,長期的には年約947 m2の割合で有意に縮小していることが判明した.中部山岳地域では降雪量に顕著な減少傾向が見られないことから,この縮小トレンドは消耗期の平均気温上昇に伴う融解(消耗)量の増大が主因であることが強く示唆された.一方,トレンドを除いた年々変動には, 消耗期の気温条件による融解(消耗)量と,涵養期の冬季季節風および南岸低気圧による積雪(涵養) 量との相乗的な作用の影響が明らかになった.本研究が構築した長期データセットは,中部山岳地域における気候変動の影響を評価する上で極めて重要な基礎資料となり得る.

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