雪氷
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ネパール・ヒマラヤ, クンブ地域およびムクト地域における永久凍土
ネパール・ヒマラヤ氷河学術調査隊業績, No.79
藤井 理行
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1980 年 42 巻 2 号 p. 81-92

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抄録

1973年5月~8月に東ネパールのクンブ地域で, また1974年6月~9月に中央ネパールのムクト地域で, 永久凍土に関する調査を実施し, 次のような結論を得た.
1) 両地域とも, 永久凍土は4,900~5,000m以上の高所に分布する.
2) 永久凍土地帯と季節凍土地帯では, 地温特性が異なる.50cm深の平均地温減率は, 永久凍土地帯で0.9~1.0℃/100mと大きいが, 季節凍土地帯では0.4~0.5℃/100mと小さい.また, 50~100cm深の地温勾配は, 永久凍土地帯では高度とともに小さくなる傾向を示すが, 季節凍土地帯では高度との関係はほとんどない.
3) クンブ地域の永久凍土下限における年平均気温は, -2.4~-3.0℃で, 高緯度地域の永久凍土南限に比べ低い.これは, ネパール・ヒマラヤの方が日射量が大きく, 地温と気温の差も大きいことによると考えられる.
4) ネパール・ヒマラヤのモンスーン気候は, 凍土の融解を抑えるという点で, 永久凍土の存在に有利な条件をつくっている.
5) ムクト地域では, 礫質構造土の発達がよい.sorted lobesや大型の多角形土や線条土は, 永久凍土の存在に関係して発達していると考えられる.
6) 両地域の氷河は, 永久凍土地帯に存在する.このことは, この地域の氷河が極地型であるということと, 気候学的に同義であると思われる.
7) 永久凍土の分布下限は, 森林限界より700~1,200m高く, また雪線高度より700~800m低い.夏期に出現する池のほとんどは, 永久凍土地帯にあり, 永久凍土の存在と関係していると思われる.

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