1991 年 53 巻 2 号 p. 145-154
着氷の一種である霧氷は,冬の美しい自然の造形としてよく知られている.長崎県島原半島中央に位置する雲仙の霧氷も有名ではあるが,霧氷が生成するための気象条件はなかなか満足されないため,特に西日本地域においては,霧氷が着氷する機会はかなり限られている.そこで,この研究は室内での人工的な霧氷の生成を可能にし,年間を通して霧氷の観測ができるようにすることを目的としている.本実験では,内径30mmの透明アクリルパイプを用いて,温度は-5・-10℃,風速は5・10・15m/sと変化させ,被着氷物として注射針と木の棒を使用した.また,加湿には超音波加湿器からの霧を使用した.これらの条件下で実験を行い,実験条件と着氷生成の特徴との関わりについて検討した.その結果,実験条件を様々に変化させることにより,密霧氷・粗霧氷・雨氷・樹霜などを着氷させることができた上,着氷形状や着氷速度と実験条件(温度・風速)との関係が明らかになってきた.また,本実験で得られた捕捉率は,他研究者の値よりかなり小さくなったが,この原因については今後検討を要する.