ファジィ理論に基づく可能性線形回帰分析を表層雪崩の到達危険度評価に適用することを試みた.可能性線形回帰分析は,基本的には通常の多変量線形回帰分析と同じであるが,得られるモデルの回帰係数がある幅を持ったファジィ数であることだけが異なる.すなわち,与えられたデータのもつあいまいさに見合うように解をある幅を持った形で求めようとしたものであり,主観的判断の含まれるような問題をモデル化する場合に非常に有効な手法である.
本検討では,見通し角を目的変数とした可能性線形回帰分析を行い,見通し角に及ぼす各種要因の影響度を調べて検討する過程で,2ケースのモデル(9要因の場合,最適要因による場合)を構築し,それぞれのモデルの要因について考察を行った.それによれば,表層雪崩の見通し角に影響する主要因は雪崩の規模を表す要因と流下する斜面の状況に関する要因(とくに,斜面長)であるという結論が得られた.