雪氷
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チベット高原の寒冷氷河における上積氷の研究
藤田 耕史
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1998 年 60 巻 5 号 p. 379-385

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抄録

チベット高原上の寒冷氷河の質量収支過程を明らかにするために,タングラ山域小ドンケマディ氷河にて,1993年のモンスーン期に観測をおこなった.この氷河では氷河表面が融解によって低下する際にも,積雪下の氷面で浸透水の再凍結が生じ,実際には消耗とならないことを明らかにした.この過程を定量的に評価するために,凍結量,氷体の温度,浸透水との関係を時間的・空間的に比較した.実際に積雪下で凍結する水の量は,氷体の温度とそこに供給される浸透水の量によって決まることがわかった.質量収支が正となる涵養域では,温暖氷河なら流出してしまう浸透水の約6割が再凍結によって流出せず,再び氷河に固体として取り込まれることを明らかにした.

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