2002 年 64 巻 5 号 p. 523-532
乾雪表層雪崩は一般に雪面近傍の密度の大きい流れ層とこれを覆う雪煙から構成されるが,内部構造の詳細は未知の部分が多い.そこで札幌宮の森ジャンプ競技場の斜面上で最大240kgの雪を流下させる雪崩実験を実施した.測定地点での速度は15m/s以上に達し,雪煙の高さも40cmまで発達した.流れの先端部は散発的な雪塊により構成されたが,それに続く主部では底面付近に流動雪と多数の雪塊を多く含む流れ層が存在し,上部は雪煙が大きく発達した.一方,流れ後方の尾部でも2層構造は維持されたが,雪塊の数は減少し雪煙も薄く間欠的な流れとなった.主部では流れ層の速度が雪煙より大きいが,尾部では流れ層は減速する一方,雪煙部の変化は小さく速度勾配が逆転した.流れ層内部の流動雪の密度は主部と尾部でそれぞれ10~40kg/m3,40~70 kg/m3で後者の方が約2倍大きい.流れ内部に設置した様々なセンサの出力のスペクトル解析の結果からは,流れ内部に長さ1.5~4m程度の特徴的な構造が存在することが確認された.