抄録
経済学の世界において,これまでは幸福を表す指標として効用が用いられてきたが,近年では包括的自己評価点として基数的計測が可能である主観的幸福度指標に利点を見出す研究が増えてきている。本研究では主観的幸福度指標を軸として,GDP,失業など経済の条件が幸福に与える影響を取り除いた上で,環境の条件が幸福とどのような関係性にあるのかについて検証を行う。先行研究でも扱われている環境汚染指標の浮遊粒子状物質(PM10)濃度と二酸化硫黄(SO2)排出量を分析の対象とし,さらに,先行研究では扱われていないエネルギー消費量,二酸化炭素(CO2)排出量といった地球全体に関わる指標についても検証を行った結果,PM10濃度および一人当たりSO2排出量の低減が主観的幸福度向上の可能性を有していることが示唆された。