環境科学会誌
Online ISSN : 1884-5029
Print ISSN : 0915-0048
ISSN-L : 0915-0048
一般論文
産業廃棄物税の施行に伴う建設業界の産業廃棄物の分析
後藤 正樹伊藤 一帆鈴木 嘉彦
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 24 巻 3 号 p. 207-217

詳細
抄録
平成12年4月の地方分権一括法による地方税法の改正により法定外目的税制度が創設され,多くの地方自治体で産業廃棄物税が施行された。本研究では,建設業界の産業廃棄物に着目し,平成12年度と16年度のデータを用い,その間に施行された産業廃棄物税が産廃の流れに与えた影響を分析する。使用するデータは,各都道府県の産業廃棄物実態調査報告書から引用する。同報告書は,発行年度が各都道府県でばらばらであり,本研究の分析手法で必要なデータが記載されている場合とそうでない場合がある。このため限定された都県のデータに基づいた分析となる。分析方法は二つあり,一つは産廃データを目的変数と説明変数とに分け,回帰分析を行い,決定係数の値から都県の特性の違いを明確にする方法である。もう一つは,産廃の処理の流れに注目する方法である。産廃の発生量,資源化量,最終処分量等のデータを利用し,処理の主な流れの変化と産廃税の関係を明確にする。具体的には,建設業界の全ての産廃の発生量の増加率に対する最終処分量の増加率に着目し,回帰分析した。その結果,岡山県は最終処分量の減少率が他の都県とは異なり大きな値になることが明らかとなった。これは岡山県が導入した産廃税に起因すると推定できる。また産廃の処理の流れを分析することにより,岡山県とは課税客体が異なる産廃税を導入した三重県の建設業界のがれき類では,発生量の増加を自己中間処理後再生利用量の流れを通じて課税回避していることが明らかとなった。三重県と同様の産廃税を導入した滋賀県では,産廃処理の流れは産廃税を導入していない都県と同様であったが,課税回避につながる再生施設での再生率が0.994と非常に高い値を示すことが明らかとなった。
著者関連情報
© 2011 社団法人 環境科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top