環境科学会誌
Online ISSN : 1884-5029
Print ISSN : 0915-0048
ISSN-L : 0915-0048
シンポジウム論文
地域協働による一般廃棄物削減方策に関する研究
-東京都調布市を事例として-
山本 佳世子
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 24 巻 4 号 p. 372-383

詳細
抄録

本研究は東京都調布市を対象として,一般廃棄物処理の階層(発生抑制,再使用,再生利用)ごとに地域協働の実態を把握し,問題点を抽出して実現方策を提案することを目的とした。本研究の結論は,以下の4点に要約することができる。
(1)行政施策では,2000年代前半には発生抑制と再生利用に関する行政施策が多く,継続的なイベントの開催による市民意識の向上や家庭ごみの有料化により,2004年に大幅な一般廃棄物の削減が実現した。2000年代後半には3R以外に該当する行政施策も増えたが,焼却施設問題に関連して行政施策が主に実施され,行政単独でのものが多かった。
(2)市民・自治会および企業・事業所の取り組みの実施状況では,発生抑制,再使用では取り組み自体が少なく実施状況は低調であったが,再生利用では他の階層よりも取り組みが多く実施状況も良好であった。「ごみ減量に関する意識啓発・情報提供」が最も必要とされていた行政施策であり,「緊急ごみダイエットの充実」に関して企業・事業所でたいへん積極的に取り組んでいるが,削減目標の具体的な数値まではあまり認知されていなかった。
(3)地域協働による一般廃棄物削減の問題点は,発生抑制,再使用では,行政施策があまり行われていないうえに,市民・自治会および企業・事業所による取り組みは少ないだけではなく,実施状況も低調であることである。再生利用では行政施策が多く,分別収集に関する市民・自治会および企業・事業所の取り組みの実施状況が良好であるが,生ごみの分別収集と再資源化まではあまり取り組んでいないことである。
(4)地域協働による一般廃棄物削減方策として,行政施策の創出や活発化,市民・自治会および企業・事業所の取り組みの実施状況の向上に関するものだけではなく,3つの階層以外の方策として情報提供や普及啓発の推進,環境イベントの積極的な開催,地域協働へのNPO等の団体の関与の促進を提案した。

著者関連情報
© 2011 社団法人 環境科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top