抄録
ほぼ同じ位置から撮影された北八ヶ岳,縞枯山に見られる縞枯れの写真を1931 年から2010 年までの80 年間について集め,それらの比較を行った。縞枯現象の大局的な動きは,枯死木帯が稜線に向かい進む速度と,森林帯が枯死木帯の上方に向かって進む速度のバランスにより決定されることがわかった。これらの速度はおよそ50 年の周期で上下動する年平均気温に深く関わることがわかった。つまり,年平均気温の低温期に起こった樹木の枯死が,10 ~20 年のタイムラグで白骨化することで年平均気温の上昇期に枯死木帯が大きく進行する。更に,年平均気温の高温期付近では樹木の生長も著しく,森林帯が枯死木帯の下部から上部に向かって進行するが,年平均気温の下降期には森林帯および枯死木帯の双方とも進行が停止する。