環境科学会誌
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一般論文
ICT機器用LSIパッケージに含有される金属資源分析
中澤 克仁胡 勝治
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2013 年 26 巻 3 号 p. 217-225

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抄録

現在のインターネット社会に代表されるように,ICTの発展は著しく,その製品・サービスは様々な分野で活用されている。一方で,ICT機器には,その機能性を向上させるために,貴金属・希少金属を含有した材料・部品が多種多様に使用されており,近年のアジア諸国の急激な経済発展に伴う金属資源の需要拡大,これに起因した価格高騰等により,日本国内における金属資源の安定供給が懸念されている。そこで本研究では,まずICT機器の金属資源の含有状況を把握するために,デスクトップ型パーソナルコンピュータに搭載されているLSIパッケージを対象として,ここに含有されている金属資源濃度を分析した上で,これらの結果から資源経済価値およびTMRを算定することで,今後の金属資源リサイクルの可能性を検討した。
その結果,各種LSI パッケージにおける金属資源の含有濃度分析から,LSIパッケージの年代や形状によって,金属資源の含有濃度は大きく異なることが確認された。さらに,近年のLSIパッケージにおけるAuの含有濃度は低下傾向にあり,逆にCuの含有濃度は増大傾向にあるものの,LSIパッケージのリサイクルにおいては,Auの回収が経済的な効果として大きいことが資源経済価値の結果から示された。希少金属におけるTMRとしては,端子材のNiやCo,内部配線材料のMoとWに加え,放熱材料として使用されているInの影響が極めて大きく,今後の需要増大によるリサイクルの必要性が示唆された。また,LSIパッケージにおけるAuは,資源経済価値やTMRの結果において支配的であった一方で,含有濃度の大きいCuによる影響は相対的に小さいことが認められた。

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© 2013 社団法人 環境科学会
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