環境科学会誌
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一般論文
環境広告の評価要因の社会心理学的分析
-環境への関与,エコ商品への関与, メディア・リテラシーを用いて-
高浦 佑介池田 謙一
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2013 年 26 巻 4 号 p. 366-373

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抄録

近年,地球環境問題への関心の高まりに伴い,環境問題をテーマとした「環境広告」が注目されている。しかし,環境広告を対象とした研究は非常に少なく,どのように評価されているのかも明らかになっていない。そこで,環境広告の評価がどういった要因によって規定されているのか検討した。本研究では,まず,環境広告の特徴を一般広告,環境配慮行動研究と理論的に比較検討したうえで,環境配慮の側面の指標である環境への関与,消費行動の側面の指標であるエコ商品への関与,メディア利用の側面の指標であるメディア・リテラシーがそれぞれ環境広告の評価にどのような影響を与えるか検討した。加えて,環境配慮を強調した条件(環境強調条件)と経済的メリットを強調した条件(経済強調条件)といったフレーミングの違いで評価要因がどのように異なっているのか検討した。
2009年10月~11月に郵送調査によるシナリオ実験を行った(有効回答数は204,回収率:37.8%)。実験刺激として,車広告,冷蔵庫広告を用い,それぞれの条件でメッセージの内容のみ変更した。環境への関与,エコ商品への関与,メディア・リテラシーについて尋ねた後に,車・冷蔵庫の広告を提示し,広告の評価について尋ねた。
結果,車・冷蔵庫広告とも環境広告の評価には,環境への関与の効果は見られず,エコ商品への関与の正の効果,メディア・リテラシーの負の効果が見られた。よって,環境広告の評価要因として,環境配慮の側面である環境への関与は規定因とならず,消費行動の側面であるエコ商品への関与,メディア利用の側面であるメディア・リテラシーが規定因となることが示唆された。また,実験条件によって広告評価の平均値差は見られなかった。実験条件ごとで評価要因の効果の違いがみられ,経済強調条件よりも,環境強調条件のほうが,メディア・リテラシーの効果が強く,エコ商品への関与の効果が小さいことが示された。

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© 2013 社団法人 環境科学会
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