環境科学会誌
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一般論文
独立峰と円形島の放射状流下渓流水質の方位分布特性
海老瀬 潜一
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2013 年 26 巻 6 号 p. 461-476

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抄録

渓流水質の方位分布で気象・水文学的に顕著な特徴の反映が期待でき,円錐形独立峰とみなせる岩木山・鳥海山・大山と屋久島の四山系の放射状流下渓流群の水質調査を秋季・春季・夏季の3回実施した。いずれも日本海・東シナ海に面し,冬季に冠雪する標高1600mを超える高山である。また,最高峰が608mで高山のない円形島の隠岐島後で春季調査を行った。四山系および隠岐島後の東西南北の4方位別渓流群の水質平均濃度の比較と,年間降水量・風向,酸性沈着物量や海岸線からの距離との関係を検討した。四山系の方位分布では,全般的に偏西風によって海塩や長距離輸送された大気汚染起因の酸性沈着物で西側の渓流水質濃度が高い傾向が見られた。しかし,岩木山南側ではSO42-濃度が他方位より高く,鳥海山北側ではClやNa濃度が他方位より高くなり,火山・温泉影響と考えられた。3回調査の全渓流水質の平均濃度を四山系で比較すると,屋久島が降水量の多さでH以外の濃度の低さが目立ち,火山・温泉影響の項目を除いた水質濃度では大山が相対的に高い傾向であった。屋久島と大山が海塩や酸性沈着物影響の方位差を反映することがわかった。隠岐島後では偏西風により西および北側で海塩影響が大きかった。円錐形状,調査地点高度差,渓流数等から酸性沈着物や海塩の渓流水質影響と気象・水文条件との関係を検討するには,四周が海の屋久島が最も適当であることが明らかになった。

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