環境科学会誌
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一般論文
事業所データを用いたポーター仮説の検証—環境規制と日本企業の研究開発・経営業績—
陳 舒蕾 功刀 祐之有村 俊秀
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2018 年 31 巻 3 号 p. 136-147

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抄録

本稿は日本の全製造業をカバーした事業所データを用いて,①弱いポーター仮説,②狭義のポーター仮説,③強いポーター仮説の妥当性を検証した。筆者の知る限り,日本に着目した研究の中で,本稿は初めてポーター仮説の全バージョンを考察したものである。実証分析の結果,①弱いポーター仮説に関しては,環境規制の強化は企業のイノベーションを促進できる可能性があることを確認した。また,②狭義のポーター仮説に関しては,柔軟性が高い経済的手段(環境税と補助金)はイノベーションを促進できるのに対し,柔軟性が低い技術規制と環境パフォーマンス規制は有意な促進効果がない可能性が示された。さらに,③強いポーター仮説に関しては,環境規制の強化はイノベーションを通して企業のビジネスパフォーマンスに間接的に正の影響を及ぼすものの,直接的には負の影響を与えることを明らかにした。要するに,本稿は①弱いポーター仮説,②狭義のポーター仮説について整合的な実証分析の結果を得た一方で,③強いポーター仮説を裏付ける証拠を見いだせなかった。

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