環境科学会誌
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2023年シンポジウム
市民によるオンライン討議会における参加者の態度・意識の変容—戸建て住宅の脱炭素化をテーマとして—
大塚 佳臣 平松 あい後藤 尚弘花岡 千草荒巻 俊也
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2025 年 38 巻 2 号 p. 16-32

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抄録

本研究では,戸建て住宅の脱炭素対策をテーマとして,北九州市民を対象としたオンライン討議会を実施し,情報提供や討議を通じた参加者の態度変容を定量的に評価することで合意形成のプロセスを明らかにすると同時に,地球温暖化や気候変動に対する意識と行動に関する心理的特性に着目して,態度変容との関連性を評価した。

討議の前は,太陽光発電パネル(PV)の利用を優先し,PV電力を有効に活用するという視点からPVに電気自動車(EV)または蓄電池を組み合わせたシナリオを支持していた。1回目の討議では,GHG削減対策のための費用が話題の中心になり,費用とGHG排出削減量のバランスがとれるシナリオを支持するようになった。2回目の討議の前に,戸建て住宅におけるGHG削減対策補助金に係る社会全体の負担額の情報を提供したところ,参加者全体で費用の優先度が高くなったが,2回目の討議後に選ばれたシナリオは費用側面だけが強調されたものではなく,PV電力を有効に活用するという視点が考慮され,EVを含めた蓄電池の活用を考慮したシナリオに支持が集約されるようになった。

また,地球温暖化・気候変動への意識の違いによって,優先する属性や選択するシナリオに差がみられたが,参加者は討議の中で,他者の意見の違いを認識し,自身の軸を満たしつつ,社会への影響,他者の立場(住居形態)やこだわり(心理特性)も考慮したシナリオを選ぶようになっていた。

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