環境科学会誌
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樹冠雨測定法によるスギ林への硫黄化合物および窒素化合物の沈着速度の推定
高橋 章佐藤 一男藤田 慎一
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1998 年 11 巻 1 号 p. 39-48

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抄録

 本研究では,林内での観測のデータをもとに,正味の林内沈着量(樹冠雨+樹幹流-林外雨)を従属変数,乾性沈着するガス・粒子状物質の大気中濃度を独立変数として,重回帰分析により沈着速度を推定する方法を提案した。この方法の利点は,樹冠からの溶脱や蓄積が無視できる化学種に対しては,正味の林内沈着量と大気中濃度のセットデータが与えられれば,複数のガス・粒子状物質の乾性沈着が分離でき,多成分の沈着速度を同時に算出できることである。 この方法を,神奈川県伊勢原市のスギ林で実施した通年観測のデータに適用した結果,大気中の硫黄化合物および窒素化合物の沈着速度の年平均値(cm/s)として,SO2:0.50,粒子状硫酸塩(SO42- ):0.057,HNO3:3.5,粒子状硝酸塩(NO3- ):1.3の値が得られた。これらの値は,種々の方法で推定された既往の沈着速度に近いものであった。

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