環境科学会誌
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利根川中流域における発生窒素負荷量の増加とその原因解明
田中 恒夫川島 博之岡本 勝男黒田 正和
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1998 年 11 巻 4 号 p. 373-380

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抄録

 利根川へ流入する窒素負荷量(流入窒素負荷量)の増加は今日の大きな関心事である。本研究では,利根川流域である群馬県で発生する窒素負荷量(発生窒素負荷量)の推定を原単位法より行い,その結果から窒素負荷低減化対策を検討した。窒素の発生源は,家畜(牛,豚,鶏),農耕地(水田,畑地),市街地,森林および人間とした。畜産廃棄物からの発生窒素負荷量は全体の約50%を占め,最も多かった。特に,群馬県南東部(利根川中流域)において,畜産廃棄物からの発生窒素負荷量の増加は著しかった。利根川中流部の刀水橋調査地点の流入窒素負荷量と群馬県での発生窒素負荷総量のそれぞれのピークの間に数年の時間遅れが存在し,流域での窒素蓄積の可能性が示唆された。また,流入窒素負荷量と発生窒素負荷総量から求めた流達率の時期による変化は大きかった。窒素負荷低減化対策として畜産廃棄物の農耕地へのリサイクルが最も有効と判断されたが,農耕地面積は減少傾向にあるため,リサイクルの方法やリサイクル以外の畜産廃棄物の利用の方法を検討する必要があると考えられた。すなわち,畜産業の分散化,流域外への畜産廃棄物の供給も考慮した広範囲の定量的なリサイクル,そして畜産廃棄物の発電等への利用等である。

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