抄録
北海道産ウミスズメ類3種10検体について有機塩素化合物(OCs)を分析したところ,検出濃度はPCBsが最も高く,ついでDDTs,CHLs,HCB,HCHsの順であった。一方ブチルスズ化合物(BTs)の濃度は,エトピリカではCHLsやHCB,HCHsと同程度,ケイマフリとウトウはDDTsに近い値を示した。ウミスズメ類のOCsとBTs濃度及びコプラナPCBsから算出したTEQ値(2,3,7,8-TCDD毒性等量値)について,日本周辺および北太平洋上に分布する他の魚食性鳥類と比較したところ,いずれも1~2桁低値であった。今回調査したウミスズメ類のコプラナPCBsについてのTEQは,ニワトリ卵胚の最小有害作用量(LOAEL,10pg/gTEQ)より低値であった。PCB汚染によるウミスズメ類の個体数減少の可能性は低いと考えられた。