抄録
気候変動により引き起こされる影響を軽減するために適応策が有効であることはこれまでにも度々言われてきたが,その性質や具体的なプロセスに関する理解はいまだ乏しく,農業影響の評価に際して適応の効果はかなり簡略化された形で取り扱われるのみである。不確実性の高い将来の気候変動に対する最適な適応策の決定は困難であるが,次善の方法として,現状気候下での気候の変動性に対する適応能力を高め,突発的な異常気象に対する脆弱性を減少させることができる適応策をまず選択することが考えられる。 農業影響への適応策の選択肢は挙げられてきているが,それらの適応手段のうちどれがいつとられていくべきかという評価は多くは行なわれていない。そのような評価には,適応手段の費用便益分析が重要であるが,システマティックに行なわれた例はいまだない。