静岡県の茶栽培が行われている小流域において,一年間に渡る採水調査を行なった。茶畑流出水中に溶存している多成分の濃度や硝酸性窒素安定同位体比について,その年間変動と特徴について明らかにした。河川中の硝酸性窒素の安定同位体比は,8月の渇水期を除いて,9.0~13.5‰の間にあり,大部分が施肥由来と考えられた。しかし,この硝酸性窒素を含め,季節ごとの施肥状況を反映するような応答性の良い変動を示す化学成分は見あたらなかった。SO42- ,C1-,Na,Ca,Srの濃度変動は,流量の対数値を説明変数として,F-,K,Mg,Mn,Niの濃度変動は,NO3- 濃度を説明変数として線形回帰モデルを適用できた。回帰モデルの計算値と実測値との相対誤差は,どの成分も8%以内にあった。次に,NO3- 濃度の1年間にわたる濃度変動について,流量,硝酸性窒素の蓄積量,および施肥量を考慮したモデル化を試みた。基本的な原単位量のみを説明変数として構築したモデルは,実測値と良く一致した。