環境科学会誌
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名古屋市における都市大気中二酸化炭素及びメタン濃度に対するヒートアイランド形成の影響
樋口 卓也山田 史進伊藤 彰記永田 陽子千葉 光一酒井 忠雄原口 紘〓
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2002 年 15 巻 4 号 p. 253-262

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抄録

 都市大気構造が大気中二酸化炭素及びメタン濃度に与える影響について,ヒートアイランド強度を指標として解析した。名古屋市8箇所の気温測定局で測定された平均気温に対してクラスター分析を行い,測定局を気温レベルに応じて都市中心部と郊外部に分類し,それぞれの代表的な測定点の気温差をヒートアイランド強度と定義した。ヒートアイランド強度が0℃ 以上かつ風速が3m/s以下の時を都市大気構造が安定化した場合(UHI時),ヒートアイランド強度が0℃ 以下かつ風速が3m/s以上の時を都市大気構造が安定化しない場合(NUHI時)として解析を行った。その結果,大気中二酸化炭素及びメタンの濃度は,都市大気構造の安定化の影響を受けて5~7%高濃度に観測されることが示された。さらに,1992年から1998年までの7年間の経年変化を解析した結果,都市大気構造の安定化の二酸化炭素及びメタン濃度への影響は毎年同じ程度に観測されることが明らかになった。また,NUHI時に測定された二酸化炭素及びメタン濃度を南鳥島において測定された濃度(バックグラウンド濃度)と比較した。その結果,1993年から1998年までの平均値として,名古屋市において測定された二酸化炭素濃度(382ppmv)は,バックグラウンド濃度(362ppmv)に比べて,都市大気構造の影響によって14ppmv,都市域からの発生によって6ppmvの寄与を受けていることが明らかになった。また,メタンは1994年から1998年までの平均値としてバックグラウンド濃度は1.78ppmv,都市大気中濃度は1.96ppmvであり,この結果から都市大気構造及び都市域からの発生による寄与は,それぞれ0.06ppmv,0.11ppmvと見積もられた。

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