環境科学会誌
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コンジョイント分析の応用によるLCIAの統合化係数の開発
伊坪 徳宏坂上 雅治栗山 浩一鷲田 豊明國部 克彦稲葉 敦
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2003 年 16 巻 5 号 p. 357-368

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抄録
 LCIA(ライフサイクル影響評価)を構成する多様な環境影響を統合化して単一指標化する重み付け手法は,製品選択等の意思決定に有用な情報を提供するものとして,これまでに多くの手法開発に向けた検討がなされてきた。その中でも,経済評価指標は評価結果のわかりやすさとLCC(ライフサイクルコスティング)や環境会計などの他の評価ツールにも応用できる観点から注目されている。コンジョイント分析は,マーケットリサーチにおいて広く利用されてきたが,近年環境経済学における研究に適用されつつある。本手法によれば統合化指標を経済評価と無次元の単一指標の二種類の評価結果を得ることができ,未だ国際的に合意のとれていない統合化手法研究の水準向上に大きく貢献することが期待されるが,現時点でLCIAにおいて適用された事例はなかった。 LCA国家プロジェクト(経済省/NEDO)では,信頼性と透明性の向上を図るため,日本版の被害算定型影響評価手法の開発に向けた検討を進めている。本手法を構成する被害評価によれば,人間の健康,生物多様性,社会資産,一次生産の四項目の保護対象の被害量に関する情報が得られる。以上の背景から本研究では,LCAプロジェクトにおいて対象とする四項目の保護対象間の重要度比較についてコンジョイント分析を適用することで実施し重み付け係数の算定を行うと同時に,これまで提案された統合化手法による結果との比較を通じて当該手法の有用性について検証した。評価結果の統計的優位性が立証されただけでなく,他の評価手法による結果とも整合する結果を得られたことから,本手法のLCIAへの利用可能性を見出すことができた。
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