抄録
本論文では,1997年,2001年に実施された国際比較調査をもとに,ロジスティック回帰を用いて気候変動対策に対する支持に関する一般市民の態度の背景にある要因について分析した。要因としては,世代間の公平性,南北問題や地球環境問題についての将来リスク,環境と経済,自国政府の環境政策評価,環境問題と自分の健康などである。1997年の分析には「今すぐ対策を取るべきか否か」,2001年には「気候変動対策の早急な規制合意」か「十分な話し合い」かについての支持を被説明変数とした。その結果,以下のような結果が得られた。 1997年時点では,問題解決の基準に将来世代をおくものほど,また現在の環境問題の責任を先進国であるとするものほど,気候変動対策に肯定的である。EUは将来世代の脅威を経済的貧困とするが,アメリカでは資源の枯渇を脅威とする傾向にあることが分かった。また,2001年時点のデータ分析によれば,1)将来世代の脅威は環境問題天然資源の枯渇であると考え,2)環境汚染の影響は地球全体と地域・国内が同等であるとし,3)自国政府の環境政策を不十分と評価しているものほど,現在の気候変動対策を「十分でない。もっと積極的に」としている。 この2時点では,EUにおいて最も態度変化が大きく,将来世代の脅威として天然資源の枯渇にシフトし,自分の健康への環境影響を大きいとするものほど現在の気候変動対策に否定的になっていることがわかった。