環境科学会誌
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電磁波リスクの社会的なガバナンスと予防的方策・予防原則―インターネット社会調査結果の要因分析からの考察―
青柳 みどり兜 真徳
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2006 年 19 巻 2 号 p. 167-175

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抄録

 本論文では,一般の人々の電磁波問題に関するリスク認識認知や態度形成について,社会的なガバナンスの観点から議論を行う。電磁波問題は,新しく出現したリスクの典型である。それは,熱による影響以外の,特に超低周波(Extremely Low Frequency:ELF)の健康影響については,専門家の間での科学的評価が未だ合意に至っていない問題であるためである。暴露の周波数によって異なる健康影響がもたらされるのであるが,それがどの周波数の場合はどのような影響なのか,不確定なのである。このような状況下で,我々は,「予防的方策・予防原則」が社会的なガバナンスを考える上で重要な原則となると考えた。そして,この予防的方策・予防原則についての支持をみるために,インターネット調査を全国5000人の一般の人々を対象として実施した。この予防的方策・予防原則の支持についての要因をロジット回帰分析によって抽出したところ,予防的方策・予防原則を支持する有意な要因として,携帯電話への依存指数(常に携帯電話を使っているなど携帯電話への依存度を表す指数),携帯電話不安指数(携帯電話がないと不安,等不安度を表す指数)があがったが,送電線への不安は有意な変数としてはあがらなかった。これは,携帯電話については個人の使用状態を制御することでリスクの制御が可能であるが,送電線については個人ではまったく制御不可能であるためであると考えられた。

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