抄録
Braun-Blanquetの優占度階級による植生調査資料を用いて,多様性指数(H')と均質度指数(J')を算出する方法を検討した。検討資料としてパーセント被度を,草本植物群落を対象に50個の調査区で測定した。平均被度(優占度階級のパーセント被度範囲の算術平均値)を用いると,H'とJ'はパーセント被度実測値から求めた値よりも大きな値となる。これは平均被度による変換では,実際のパーセント被度値に比べて,低優占度階級値を変換したパーセント被度値が高く見積られることが大きな要因であると考えられた。多様性指数や均質度指数を算出するための優占度階級値のパーセント被度への新しい変換方法として,同じ優占度階級に属する種のパーセント被度値を等比級数的に配列・変換する方法を考案した。これを用いて算出したH'とJ'の値は,他の変換方法に比べて,パーセント被度実測値から求めた値との差のばらつきを最も小さくできることがわかった。優占度階級の被度範囲の幾何平均値を用いた場合も,実測値から求めたH'やJ'の値に近い値を示した。このような結果をもたらしたのは,対象とした群落では優占度一種順位関係において等比級数的関係が成り立つことが最大の原因と考えられた。これらの結果を群落の構造的規則性と関連させて検討し,多様性指数や均質度指数を算出する際に,群落の構造が等比級数的であればパーセント被度変換値として等比級数的変換による値または幾何平均を用い方が良く,構造が等差級数的であれば平均被度または等差級数変換による値を用いた方が良いという結論を得た。さらに,植生調査資料から多様性を算出する具体的な手順を提示した。