環境科学会誌
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塗装,塗料製造および印刷工程からの芳香族C7-C9炭化水素の排出特性
田中 正宣神浦 俊一宮崎 竹二瓦家 敏男中土 井隆若松 伸司
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1992 年 5 巻 4 号 p. 239-248

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抄録

 近年,都市大気中の非メタン炭化水素への溶剤寄与の増大が指摘されるようになってきた。これら溶剤中には,多量の芳香族C7-C9炭化水素類が含まれていることが報告されているが,その排出の詳細については多くの検討課題が残されている。 この報文では,塗装,塗料製造および印刷工程からの芳香族C7(トルエン),C8(エチルベンゼン,o-,m-,p-キシレン)およびC9(n-プロピルベンゼン,エチルトルエン,メジチレン,プセドキュメン,ヘミマルテン)炭化水素の排出を非メタン炭化水素濃度との関連で検討した。これら炭化水素の排出には次のような特性が観察された。 1.ポリマーフィルム塗装工程(一般に低い強制乾燥温度)から排出される非メタン炭化水素濃度は高い値であった。その非メタン炭化水素中では芳香族C7,C8の割合が高く(C7;平均64.8%,C8;平均40.4%),芳香族C9炭化水素の割合は非常に低い値(C9;平均6.0%)であった。2.金属板塗装工程(一般に高い強制乾燥温度)から排出される非メタン炭化水素濃度も高い値であった。 この場合,非メタン炭化水素中の芳香族C8,C9の割合が高く(C8;平均24.8%,C9;平均27.7%),芳香族C7炭化水素の割合は非常に低い値(C7;平均4.3%)であった。 3.塗料製造工程から排出される非メタン炭化水素濃度についても比較的高い値が観察された。これらの工程からの芳香族C7,C8,C9炭化水素の排出特性はそこで製造される塗料の特性を反映し,上述した塗装工程での排出特性と良い一致を示した。4.印刷工程から排出される非メタン炭化水素濃度は他の工程に較べて低い値であった。この非メタン炭化水素に占める芳香族C7,C8,C9炭化水素ではC8が非常に高く(C8;33.7%以上),C7,C9は低い値(C7;2.2%以下,C9;9.6%以下)であった。

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