2022 年 2022 巻 9 号 p. 109-134
1983年に制作された中国アニメーション「天書奇譚(てんしょきたん)」が4K 修復版として 2021年11⽉5⽇に中国で上映公開された。この再公開の機会は改めて受容者に中国の伝統的⺠族⽂化を認知させる役割があったと考えられる。また、作品は制作当時それに従事した⼈々の⾼い技術⼒を知る機会を提供し、現代の創作者は偉⼤な教育的機会を得たと⾔える。現在、フィルムメディアで作られた昔の作品が時間の経過によって次第に破損し、徐々に鑑賞できなくなる中、それらがデジタル修復以降、⽂化の保存や伝播、また新たな創作への契機となる現象が散⾒されている。本論 考では「天書奇譚」を例に過去の映像作品がデジタル化され、再上映・公開される際に⽣じる社会的な影響や意義について考察する。