2017 年 100 巻 p. 181-205
本稿は、日本人ムスリム女性のライフストーリーの聞き取りを通じて、彼女たちがどのように日本社会においてムスリムであることを実践し、アイデンティティや社会関係と関わる潜在的コンフリクトを回避しているのかという点を明らかにすることで、「日々生きられる宗教」としてのイスラームのあり方を描くことを目的としている。分析の結果、彼女たちは、与えられた制約のなかで所与の資源・情報・関係を駆使しながら、「日本人-ムスリム-女性」を日々実践していることが明らかとなった。その姿は、「スカーフ」に表象/矮小化される日本人ムスリム女性のイメージとは程遠く、また「イスラーム」と冠される概念の外延の柔軟さと奥行きを示すものとなっている。