社会学研究
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特集 東北農村の諸相
現代農村と農本主義
小林 一穂
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2017 年 100 巻 p. 61-82

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抄録

 現代農村では担い手の問題が重要になっている。本稿では、農業者の主体的な起動力となる行動理念のあり方を模索することによって、現代農村の困難な状況を突破する糸口を見出そうとする。

 これまでの農本主義論を再検討して、農業者の日常意識である農本意識の契機として、自然との融和、勤労の重視、家族中心、地域的協同を抽出した。農本意識を体系化させ固定化したイデオロギーである農本主義においては、この諸契機が、自然没入主義、勤労至上主義、家父長主義、「共同体」主義、へと変質させられる。この実例として現代の農本主義者をとりあげて検討した。

 農業者の生産と生活に妥当しつつ体系化されて不断に再構成される農本思想は、自然、勤労、家族、協同、という諸契機から構成される。この農本思想が農業者の行動理念として機能することが、現代農村の家族経営と村落社会の立て直しにとって重要である。

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© 2017 東北社会学研究会
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