2018 年 101 巻 p. 37-59
本稿の目的は、先行研究とは異なるアプローチで不公平感を分析することをつうじて、「階層意識としての不公平感」の特質を再検討することである。不公平感についての先行研究では不公平感と階層的地位の関連が弱いという経験的知見がたびたび見出された結果、不公平感は「空論上の階層意識」として次第に注目を集めなくなっていったのだが、本稿はこれを不公平感そのものの特質というよりは先行研究のアプローチの問題だと考える。先行研究は不公平感を生み出す意識の構造を単純化してモデル化し、人々の抱く不公平感も同質的なものと想定したのに対し、本稿は(ⅰ)全般的不公平感・領域別不公平感・公平判断基準・社会の仕組みの認知という意識変数の内的構造と(ⅱ)その異質性を明らかにすることをつうじて、不公平感という意識がどのようなものなのかを解明しつつ、(ⅲ)不公平感の構造と階層的地位がどのように関連しているのかを検討することをつうじて、階層意識としての不公平感の特質を明らかにすることを目指す。以上のようなアプローチによって、一九九五年SSM調査B票を分析したところ、回答者の抱く不公平感は質的に異なる五つのタイプが存在し、それぞれの不公平感のタイプに結びついた階層集団が存在することが明らかになった。そして、この知見をもとに階層意識としての不公平感の特質を議論した。