2018 年 101 巻 p. 85-114
耐久消費財の所有状況によって、階層帰属意識を説明しようとする試みが従前よりなされてきたが、その説明力は低いことが指摘されていた。このような説明力の低さは、耐久消費財の経済的価値の側面に着目する従来の分析では、多元的な要因によって評価されるようになった帰属階層を、十分に捉えられなくなったことに起因すると推察される。そこで本研究では、耐久消費財の所有を尋ねた項目へ、情報を縮約することを目的とした複数の多変量解析を適用して異なる側面についての情報を抽出し、それらのうち階層帰属意識を説明するのに有効なのは、どのようなものか検証を行った。また、SSM95とSSP2015という異なる時点で実施された二つの社会調査を用いて、分析結果の時点間比較も行い、階層帰属意識の規定因に時代的な変化が生じたのかについても検討した。