社会学研究
Online ISSN : 2436-5688
Print ISSN : 0559-7099
論説
早期選抜における機会不平等の検討
トランジションモデルを用いた質的格差の同時分析
濱本 真一
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2015 年 96 巻 p. 115-137

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抄録

 本稿の目的は、中学校段階も含めた日本の教育達成過程における階層間格差を抽出することである。これまでの教育達成に関する研究では、学校段階以降における質的差異、すなわちどのようなタイプの学校に進学するかに階層間格差が存在し、さらにのちの教育段階に影響を与えることが知られてきた。義務教育段階である中学校においても、都市圏を中心に国私立中学校のシェアが増加傾向にあり、教育機会の質的な差異が拡大している。本稿では、国私立中学校への進学に対して出身階層の影響力が存在するのか、そして階層による規定力は後の学校段階(高校、高等教育)と比較してどの程度の大きさなのかを測ることを目的とする。

 分析の結果、(1)国私立中学校進学に対して出身階層の影響力が存在すること、(2)その効果の大きさは高校以上の段階と比べて暮らし向きに関して大きく、父学歴、父職では大きくないことが明らかとなった。中学校段階にも明確な階層分化機能が存在していること、国私立中学校の進学に関しては家庭の経済的な背景が重要な決定要因となることが示された。中学校段階においては、近年公立学校においても選抜を課すタイプの中高一貫校が増加しており、中学校段階での階層分化機能がより大きくなる可能性が示唆される。

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© 2015 東北社会学研究会
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