社会学研究
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論説
日本の一九六〇年代学生運動における多元性
文化的アプローチによる事例分析から
小杉 亮子
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2015 年 96 巻 p. 165-191

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抄録

 本稿は、戦後日本社会運動史の重要な契機である一九六〇年代学生運動の特徴と意義について、社会運動研究の文化的アプローチに基づき、参加者による運動への意味づけから考察を行なった。一九六八年から一九六九年にかけて東京大学で発生した東大闘争を事例に、参加者への聞き取り調査や一次資料に基づいて分析を行なった結果、次のことが明らかになった。第一に、一九六〇年代学生運動では、新左翼諸党派と〈ノンセクト・ラジカル〉、さらにはそれらと敵対する日本民主青年同盟という、三層の参加者が存在した。第二に、三層の参加者たちは学生運動にたいする意味づけが異なり、とくに運動の目的と運動組織にかんする志向性を大きく異にしていた。一九六〇年代学生運動は、この三者の混在から生じた多元性と、さらには三者間の相克による複雑な動態に特徴づけられていた。第三に、一九六〇年代学生運動の多元性の背景には、一九五〇年代後半以降に起きた、社会主義革命を目指し政治党派として大衆運動を指導する学生運動に、学生が個人として学生固有の問題に取り組む学生運動が加わるという、学生運動の質的変容があった。

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© 2015 東北社会学研究会
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