2016 年 98 巻 p. 115-135
リスクに関連した社会的行為を理解し考察するさいに、行為者の、例えば母親であるという社会的属性や、女性であるという社会的属性が、個々の事例においてどのように関連しているのかを問うことは、「リスクの社会学」にとっても一つの課題であると考えられる。本稿では、リスクに関連する行為と個人の問題に焦点を当てる。まず本特集のテーマでもある「ウルリッヒ・ベックの社会理論」におけるリスクと知識と個人の問題について考察する。次に個人の社会的属性と、リスクに関連した行為との結びつきという観点を検討するべく、「災害と女性」に関する経験的事例として「女性の視点」という言い方について検討する。まとめとして、リスクをめぐる社会的行為と個人の社会的属性の結びつきという視角に立つことが、リスク問題におけるどのような経験的事実に切り込む可能性があるのかをルーマンの議論もふまえつつ論じたい。