社会学研究
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論説
精神分析学的アルコホリズム論における性役割理解と女性批判
アルコール問題の医療化(一九三〇-五〇年代)を巡って
泉 啓
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2017 年 99 巻 p. 109-132

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抄録

 アルコール問題の医療化論によれば、かつて「悪徳」と見なされたアルコール問題は、一九三〇、四〇年代以降ジェリネックらの活躍により「コントロール喪失」の「病」として本格的な治療対象となったといわれる。もっとも従来の医療化論では、飲酒者本人に関する医療言説に比して、アルコホリックの家族を巡る医療言説は看過されがちであった。一九三〇年代以降の初期の家族病因論的言説(「パーソナリティ不全説」)を含む当時の精神分析学的なアルコホリズム論に注目し、この医療言説出現の意義について歴史的に考察する試みは不足していた。

 本稿で論じるように、かつて一九世紀に禁酒運動家から「純粋無垢」と語られた女性は、二〇世紀に精神分析学の登場とともに不純な欲求主体と見なされるようになった。また男性アルコホリックの「コントロール喪失」状態は、精神分析家からは「女々しい」状態として解釈され、こうした男性の女性化が女性側の逸脱に起因すると意味づけられた。精神分析学的アルコホリズム論に着目することで、本稿は、アルコール問題の医療化が、飲酒者本人の免責化をもたらす一方、妻や母親など家族の有責化を伴う歴史的過程であったことを論じる。

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© 2017 東北社会学研究会
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